aki100mac’s blog

日頃考えていること、体験したことをブログしています。

静かな気持ちになりたいな。

東京には、素敵な本屋さんがたくさん、たくさんあるのでした。


最近昔ほどには本屋さんに行かなくなりました。というか、行きたいな、そう思わせるような街の本屋さんがめっきり減ったからです。戸畑にあった、天神町のあの本屋さん、西鉄路面電車(僕たちは、チンチン電車と呼んでいましたっけ)通りにあったあの本屋さん、小倉の大きな本屋さんや小さな本屋さん、福岡の西新町のあの本屋さん、高取にあったあの本屋さん、み〜んな無くなりました。代わりにあるのは、どれも同じような傾向の本ばかり、何とか大賞、かんとか大賞の本ばかり並べて、さあ寄っていった買っていったみたいな、何でもいいから売れればいい、そんな気持ちにさせられてしまうような、そんな面白くもなんともない、本屋さんというか、本を並べただけのスーパーみたい。そんななか、かろうじて私が足を運んでいるのは、博多阪急にある「丸善」だけです。ちょっと前までは、他にももう一店あったのですが、今は天神ビッグバンだとかで、ビル自体が取り壊されてしまいました。いずれ、ミニ東京みたいな「グローバルデザイン」のビルが建ち、その中に「近代的な」装いでもって、さぞかし行ってみたくなるような「書店」ができるのでしょうね。これは皮肉でもなんでもありません。私がそう感じているだけ、それだけです。

 さて、そんな、書店フリークな私が先週購入したのが、「ゆう」という本です。前にも書きましたが、この本の前に、「あさ」という素敵な写真詩集があります。それの続きの写真詩集です。この本は前の方から詩人の谷川俊太郎さんがメインで、大きな活字で詩を載せて、それに合うような写真を吉村和敏さんという写真家が写真を付けています。後ろからは、別のややカチッとした書体、それも小さなゴシック調の書体で詩を載せ、それに合ったような写真をやはり吉村和敏さんが写真を付けています。

 谷川俊太郎さんは、詩人であり、いわば言葉のプロですから、文章が上手なのは言うまでもありませんが、私が驚いているのは、写真家の吉村和敏さんの書いている文章が、とても素敵なことです。

 ここに、彼の「あとがき」を引用してみますね。

『    なつかしい夕焼け空

 ハリファックスの街中から車で40分ほどの所に、ペギーズ・コープと呼ばれる岬があります。外海に突き出た花崗岩の先端に、白い灯台がぽつんと建つこの見晴らしのいい場所は、夕陽が最も美しく見える岬としても知られています。

 そのため太陽が西の空に輝く時間になると、街中で暮らす多くの人々が、夕陽を見に訪れるのです。誰もがひんやりした岩の上に腰を下ろし、天が赤やオレンジに燃えるドラマチックな色彩の変化を、心から楽しんでいます。

 ある日、写真を撮る僕のすぐ傍らで、一人のご婦人がまぶしい光を浴びながら絵はがきにペンを走らせていました。興味本位に尋ねてみると、「この神聖で平和な美しさを言葉にしておきたかったの。誰に送るのかは後で考えるは・・・・・」という洒落た答えが返ってきました。

 この日は、夕暮れ特有の熟れたような真っ赤な落日が、空いっぱいに広がる筋雲をピンク色にそめあげる、どこかなつかしさを秘めた夕焼け空でした。

 この国で暮らす人々のこころは豊かです。きっとそれは、「あさ」「ゆう」という素敵な時間が、日々の暮らしのなかにごく自然にとけ込んでいるからでしょう。僕らが子どものころ、学校帰りに夕焼けを「きれい」と感じた心は、きっと大人になってからも必要なのかもしれません。

                                 吉村和敏    』

どうでしょうか。こんな素敵な文章を紡げる、そんな自然豊かな場所で、静かな気持ちでこれからの人生を送りたいな、そう考えている私でした。