aki100mac’s blog

日頃考えていること、体験したことをブログしています。

『ルリユールおじさん』

私の一押しの絵本です。ジワ〜ッときます。人の一生と仕事、受け継がれる命についての絵本です。
 小さな女の子が自分の持つ図鑑を修復してくれる人を探して、街を巡ります。そして見つけた本の修復店。そこにいたのはRelieurというおじいさんでした。日本語にすると、カタカナでルリユール、「もう一度つなげる」という意味があることを教わります。
お父さんもルリユールだったことを教えられます。
その仕事、本を修復する仕事、それをお父さんから受け継いだおじいさん。
 その工房が、グチャグチャなんだけど、なんて言うのかな〜、魅力がタップリです。魔法の家みたい。「アカシアは、夜になると葉をとじてねむるのよ、しってる?」とルリユールおじさんに無邪気に訊ねる主人公のソフィーです。
 ソフィーって、知恵とか知識ですよね。フィロソフィーは知恵、知識を愛する、ですからね。この絵本、凄いな。400年は生きているアカシアの巨木、古木に新しい芽が出たの、ルリユールおじさんに教えなきゃ。走っていきながら、「あたらしい芽がでたの。あの本できてるかな。」。そして叔父さんの工房に着きました。
「あ、あたしのアカシアだ!」ソフィーの修復された図鑑、それは植物の図鑑だったのでした。
 そして、見事に修復された図鑑は工房の出窓に飾られていました。
その名は、「ARBRE de SOPHIE」ーソフィーの木たち。本の名前を新しくネーミングしていたのでした。1枚だけおじさんが綴じなおさなかった「アカシアの絵」が、表紙に生まれかわり、金の文字でソフィーの名前が刻まれていたのですね。「なんでも教えてくれる私の本」
植物の図鑑と首っ引きで、種から育てて芽が出てきた植物の名前を知ったソフィーだったのでした。
 そして、工房の中で、チェアに座っているルリユールおじさんに、アカシアの小さな芽が出た小さな植木鉢を持たせ、「ソフィーが種から育てたのよ 水はたっぷり、あ・・・・ねむっちゃった・・・・・」ルリユールおじさん、ありがとう。そうなんです、ルリユールおじさんは天国に召されたのでした。そして最期のページになります。
アカシアの大木が描かれ、その木の下には、「ソフィーの木たち」、修復された図鑑を開いて佇んでいる、1人の若い女性。おじさんのつくってくれた本は、二度とこわれることはなかった。
そして私は、植物学の研究者になった。
 この絵本の後書きに、作者の いせ ひでこ さんが、それはもう素敵な文章を載せています。
 皆さまにお勧めする、私の一押しの絵本です。
物語も秀逸ですが、なんと言ってもその絵の温もりがただ事ではありません。
 人の一生とは、仕事とは、そして受け継がれていく本の文化、受け継がれていくいのちの物語です。これは、「緩和ケア」が産まれるもとになった「ホスピス」が生まれる由縁となった、バイブルの中に鏤められている思想とも相通じるものがあると思います。
 天国への階段を少し昇っていった体験をした私。
「天国」はありますし、そして、私たちの生きているこの世界から、目に見えてはいないんだけど、天国とは確実に繫がっている、と言うことを神様に教えられ、こうして世に用いられている私。
本当に天国への階段を昇っていくまで、知恵を愛し、先人からの手仕事に近い「ホスピス」や「緩和ケア」の大切さを次の世代に、古いものを修復しながら、やっていきたいと思います。
 今なお続く悲惨な戦争が終わること願います。そして近い時期にパリを訪れ、この絵本の舞台となったパリの街の一角にある、路地裏の小さな窓を見てみたい、そう思います。
 ・・「手職人」アルチザンの「書物」という文化を未来に向けてつなげようとする、・・・、「強烈な矜持と情熱」を私も見てみたいです。さて、紙面も尽きようとしています。今日も一日、お元気で。

いせ ひでこさんの絵本です。