aki100mac’s blog

日頃考えていること、体験したことをブログしています。

化学療法、今昔

2014年11月29日 乳がん市民公開講座で、お話ししました。
当時は、光山 昌珠先生からの依頼でした。
あれから、8年近くが経過しましたが、当時問題となっていたこと、現在もおそらく問題なのでしょね。乳がんの場合は、無理な化学療法はあまりやらないと思いますがね。
例えば消化器系のがんで、原発巣だけではなく、肝臓や、肺や、体中のリンパ節などに多発転移していて、かなりの進行がんでも、治癒を目指したり、延命のために、無理な化学療法を希望する患者さんも多いと聞きます。また、それを勧めざるを得ない外科医の苦悩もあります。
 体力的にも無理で、または今は大丈夫でも、そのうち体力が低下して無理になって、でもそれでも化学療法にしがみつく患者さんもいます。
 結局は、その患者さんに十分な説明をして、作用や副作用のことを十分に説明して、その上で、受けるのであれば、あまり問題にはならないと思います。
 しかし、よく説明しないまま、無理な化学療法を行い、その結果がくんとPS(パフォーマンス・ステータス)が落ちてしまう結果になりがちです。
 PSとは、全身状態を、ADL(日常生活動作)のレベルに応じて、0から4の5段階で表したものです。
 USAの腫瘍学会が提唱した指標です。
グレード0 無症状であり、普通に社会生活が行える
グレード1 軽い症状があり、歩行したり、家事などの軽い労働はでき
る。
グレード2 歩行や行動は身のまわりの事に限られる。ときどき介助が必要。
グレード3 身の回りのことが少しできるが、介助がしばしば必要になる。日中の50%以上は起きていることが可能。
グレード4 身の回りのことができず、常に介助が必要で、終日臥床している。
 化学療法が行えるのは、グレード0からグレード2までとされています。
 がんの臨床に携わっていて思いますのは、たとえグレード1か2であって、化学療法を行ったとしても、その後急激に体力が失われ、あっという間にこの世を去る方が案外いらっしゃるな、ということです。
 結局は、緩和ケア内科に紹介しない医師もたくさんいて、自分たちの科の中で、抗がん治療を行い、痛みの緩和はするのかもしれませんが、全人的な医療にはほど遠い、そのような医療が、いまだにあちらこちらの病院で行われているのではないかと、思ってしまいます。
 そうでなければいいのですがね。
化学療法は10年以上も前の薬剤に比べれば、近年、ここ3,4年の進歩は早くめざましいものがあります。化学療法の副作用も少なくなりました。
 また、患者さんの体力や衰弱の程度、また腎機能の程度などから、フルドーズの80%とか、そのまた80%、すなわち66%の量にするとか、毎週1回、4週連続で1クールなのを、1回実施したら、1週飛ばして、2週間に1度に減らすとか、いろいろ減量して行うことも可能です。ただ、、それで本当に効果があるのかどうかは微妙です。
 また、昔に比べて今は、化学療法が良くなっている分、がんは進行しているのに、いつまでも実施でき、亡くなる直前まで受けることも可能なことがあります。
 そうしますと、昔のように、「副作用の強い化学療法はしないで、ホスピスや緩和ケア病棟にて余生をゆっくりと過ごす」ことは無くなってきました。
 今はどちらかと言えば、化学療法の効果が限定的になり、あるいは副作用が強くて、いよいよ実施できなくなってから、やっと緩和ケア内科外来に紹介されてきて、気づけば余命が短い週単位、あるいは日にち単位しか残っていない、そんな状況が多いのですね。
 すると、それからACPにとりかかっても、そんなことを考える体力も気力も残っていない、そして、あれよあれよという間に、まさに坂道を転げ落ちるかの如く、痛みや吐き気、倦怠感がどっとやってきてPSは4に近づき、すぐに亡くなってしまう、そんなことが毎日毎日起こっています。
 ですから、がん治療を受けているときから、常に、ご自分の終末を予想してください。
それが、私からのアドバイスです。