aki100mac’s blog

日頃考えていること、体験したことをブログしています。

「医療哲学カフェ」を始めます

2023年4月3日 月曜日

医療哲学カフェ、始めます。

2022年12月まで、毎週火曜日に、緩和ケアを題材にしたオンラインでの勉強会をしてきました。「緩和ケア多職種勉強会」でした。70回で終了しています。このところ勉強会ロスのような気持ちでした。

何か、勉強する題材はないものかしらと。その勉強会の途中で、私が戸畑高校の28会関西支部が開催した、ミニ同窓会に出席しました。旧交を温め、1次会が終了し、宿泊していたホテルに帰っていましたら、地下街に本屋さんを見つけました。そこで偶然見つけた「WHOLE PERSON CARE」基礎編と実践編、その中の基礎編は緩和ケア勉強会で少しやりました。今度はいよいよ実践編です。

まずは、この内容を皆さんに紹介し、今後の「医療哲学」を構築していくための基礎的な資料としたいと思います。

 今のところ考えていますテキストが3つあります。

1.Whole Person Care(全人的ケア)学習

 教材 『 Whole Person Care』 

 著者  Tom A. Hutchinson トム・ハッチンソン

 訳者  恒藤 暁

 発行元 日本ホスピス財団xx

 出版社 三輪書店

2.ひとりぼっちのオルガン

 しおたに なおや・文

 イタクラ ヨウイチ・絵

 渡部 富栄・英訳

 発行所 保育者  企画製作 メディカ出版 

3.高齢者のend-of-lifeケアガイド

 岡田黎一郎監訳                                          

 厚生科学研究所発行

 

2023年度は、5月の連休明けから始めます 。対面でできるようになったら、対面で行う予定です。輪読会ですね。オンラインでもとは思いますが、なかなか難しいことになるかもです。Zoomアドレスは田川市立病院のアドレスを使うことになりそうですが、まだ未定です。私の個人のアドレスを使うかもです。

 詳しいことが決まりましたらお知らせしていきます。

また田川市以外に住んでおられる方には、このFacebookなどでもお知らせしていきます。

何故、「医療哲学カフェ」をしようと思い立ったのかと言いますと、今日の医療を観ますと、市民の要望に私たち医師が、科別、臓器別のお仕着せの医療では対応できていないのではないかという忸怩たる思いがあるからです。

私自身のことを言えば、そもそも医学部で全人医療についての講義があった記憶はありません。しかし、卒業して医師となり、実臨床の現場に立たされたとき、病気の知識だけでは対応できないことに気づきました。特に人生の終末期に、何でもかんでも異常値を補正しようとすると、おかしなことになります。

「病気の自然の経過に委ねる」知恵が必要です。

日本の医学教育、私は斜に見ています。

私は、九州大学医学進学課程に合格し、六本松でいわゆる教養部の2年間を過ごしました。そこでの授業は、言ってみれば、高校の延長のようでした。 

今では当たり前となっている筈の、early exporsureも無かったです。卒業してすぐに奉職した佐賀医科大学医学部で、研修医となった私は、九大の学生時代には教えられなかったProblem Oriented Medical Recordを上司から教授されました。またSOAPについても徹底的にたたき込まれました。

これらのシステムは、徹底して患者中心の医療の推進に役立ちました。それまでの医師が中心の、また医療界のヒエラルキーの頂点を占めることに安穏としてきた旧世代の教育を受けてきた私には衝撃でした。

この大学の設立には、私が敬愛する故日野原重明先生が深く関わっています。マギル大学で世界に先駆けて行われていたその教育は当時は先進的すぎ、日本では異端とされた時代が長かったと思います。

しかし、やがてそれは日本全国の医科大学、医学部でも取り入れていきました。今ではそのシステムを採用していない病院は、少なくとも基幹病院では皆無だと思います。

疾病を治療するとき、私たちはいきおい病気だけに対峙し、その病気を負っている人に目を向けていない現実がありはしませんでしょうか。人が病むときは、何も身体だけが病むわけでは無く、心も精神も病みます。

「高齢者のend-of-lifeケアガイド」という1冊の書籍が手元にあります。原題を「a guide to end-of-life care for seniors」といいます。主にカナダのトロント大学とオタワ大学が主管し、カナダ国内外のヘルスサービス研究者たちが、WHOやカナダ医師会と共同で出版したものです。

日本語訳は、熊本済生会病院の医師たちが共同で行っています。私は西南学院大学社会福祉学科で長年「老年学」を講義してきました。そのテキストの一つとして、この本を取り上げてきました。

この本の帯には、監訳された故岡田玲一郎先生による素敵な文章がキャプチャーされています。ご紹介します。・・「人間は、誰でも老いていき、死んでいく。それを止めることは、神にもできない。やはり、高齢者がQOL(生きていて良かったと思うひととき)を感じられるケアが、高齢者ケアだと思う。」・・ 

どうです、なかなか素敵な文ですよね。カナダ政府はこの本を全国民に無償で配布したそうです。けだし英断だと思います。

私は現状を打開していかなくてはならないと考えます。医療を哲学してみませんか。そうすることによって、自分の医療技術だけでは無く、心もブラッシュアップし、市民の求めに適切に対応できることに繋がります。

すると、自分自身のQOLも向上していくのではないでしょうか。私が「医療哲学カフェ」を勧める由縁です。乞うご期待。

 

英彦山川や田川市立病院を見渡す丘の上、見事な芝桜の庭園です。